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茂ることまこもの生ふる淀野には
露の宿りを人ぞかりける

歌の意味
真菰がたいそう茂って生えている淀野では、露が宿る真菰を人が刈り取り、またその草陰を一夜の宿りとして借りることだ。
鑑賞
巻第二 夏歌 114

詞書は前の歌に続き「天暦御時屏風に、淀の渡りする人書ける所に」
 真菰の茂る淀野で、人が露の宿る真菰を刈り取るとともに、旅人がその草陰を露の宿りとして借りるさまを詠む歌である。「かり」に刈りと借りを掛け、真菰刈りと旅の宿りを一首に重ねた機知の歌である。詞書によれば、前歌と同じく、淀の渡しを渡る人が描かれた屏風の場面に添えた歌である。
 作者の「壬生忠見」は、平安時代中期の歌人で、壬生忠岑の子である。天徳四年の内裏歌合で平兼盛と競った歌で知られ、三十六歌仙に数えられる。

 初句「茂ること」は、茂っていることは、の意で、二句以下の真菰の茂りの程度を強調する。
 二句「まこもの生ふる」は、真菰が生えている、の意で、「生ふる」は連体形で三句の「淀野」にかかる。
 三句「淀野には」は、山城国の淀のあたりの野をいう。前歌の「淀の渡り」を受けて、同じ淀を舞台としている。
 四句「露の宿りを」は、露が宿る所を、の意で、真菰の葉に宿る露と、旅人のはかない仮の宿りとを重ねている。
 結句「人ぞかりける」は、「かり」に真菰を刈る意と宿を借りる意を掛けた掛詞である。「ぞ」の係り結びにより連体形の「ける」で結ぶ。前歌が夜深い渡しを詠んだのに続き、本歌は渡しの近くの野の宿りを詠んでいる。

まこも:水辺に生えるイネ科の草。刈り取ってむしろなどに用いた。真菰
かる:真菰を刈る意と、宿を借りる意を掛ける
よどの:山城国の淀のあたりの野。淀野
作者
壬生忠見
出典
拾遺和歌集
前の歌
いづ方に鳴きて行くらむ郭公 淀の渡りのまだ夜深きに
次の歌
かの方にはや漕ぎ寄せよ郭公 道に鳴きつと人に語らん