かの方にはや漕ぎ寄せよ郭公
道に鳴きつと人に語らん
- 歌の意味
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早くあちらの岸へ船を漕ぎ寄せよ。ほととぎすが道中で鳴いたと、人に語って聞かせよう。
- 鑑賞
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巻第二 夏歌 115
詞書「小野宮大臣家屏風に、渡りしたる所に郭公鳴きたる形あるに」
川を渡る船の上でほととぎすが鳴いたのを聞き、早く向こう岸へ漕ぎ寄せて、道中でほととぎすが鳴いたと人に語ろうと急く心を詠む歌である。ほととぎすの声を聞いた喜びを、早く人に伝えたいという気持ちに託している。詞書によれば、藤原実頼の家の屏風に、渡し場でほととぎすが鳴いている場面が描かれていたのに添えた歌である。
作者の「つらゆき」は紀貫之である。古今和歌集の撰者の中心人物で、仮名序を執筆し、土佐日記を著した。三十六歌仙に数えられる。
初句「かの方に」は、あちらの方へ、の意で、向こう岸をさす。
二句「はや漕ぎ寄せよ」は、早く漕ぎ寄せよ、の意で、船頭に呼びかける命令の形である。ここで句切れとなる。
三句「郭公」は、渡し場で鳴いたほととぎすをいう。本巻の第百十三首に続き、渡し場とほととぎすの取り合わせを詠む。
四句「道に鳴きつと」は、道中で鳴いたと、の意で、「つ」は完了の助動詞である。
結句「人に語らん」は、人に語ろう、の意で、「ん」は意志の助動詞である。本巻の第九十七首が、ほととぎすが鳴かなければ家で何を語ろうかと嘆いたのに対し、本歌は鳴いたことを語ろうと急いでおり、二首が対照をなしている。
こぎよす:船を漕いで岸に寄せる
- 作者
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紀貫之
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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茂ることまこもの生ふる淀野には 露の宿りを人ぞかりける
- 次の歌
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郭公をちかへり鳴けうなゐ子が うち垂れ髪のさみだれの空