秋の月波の底にぞ出でにける
待つらん山のかひやなからん
- 歌の意味
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秋の月は波の底に出てしまった。月の出を待っているであろう山の峡も、待ったかいがないだろう。
- 鑑賞
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巻第三 秋歌 172
詞書「水に月の宿りて侍りけるを」
秋の月が水面に映ったのを、月が波の底から出たと見立て、山あいで月の出を待っている者はそのかいもないだろうと興じる歌である。「かひ」に峡と甲斐とを掛け、水に映る月を機知的にとらえている。詞書によれば、水に月が映っているのを見て詠んだ歌である。
作者の「よしのふ」は大中臣能宣である。伊勢神宮の祭主を務めた大中臣氏の出で、梨壺の五人の一人として後撰和歌集の撰進と万葉集の訓読に携わった。三十六歌仙に数えられる。
初句「秋の月」は、秋の澄んだ月をいう。
二句「波の底にぞ」は、水の底に、の意で、「ぞ」は係助詞であり、三句の「ける」で結ぶ係り結びとなる。前歌が水面に照る月光の波を詠んだのに続き、本歌は水底に映る月を詠んでいる。
三句「出でにける」は、出てしまった、の意で、ここで句切れとなる。月は山の端から出るものとされたのを、波の底から出たとする意外さに趣がある。
四句「待つらん山の」は、月の出を待っているであろう山の、の意で、「らん」は現在推量の助動詞である。
結句「かひやなからん」は、「かひ」に山あいの峡の意と、甲斐の意を掛けた掛詞である。「や」は疑問の係助詞で、連体形の「らん」で結ぶ。
かひ:山と山の間の峡の意と、甲斐(効き目)の意を掛ける
- 作者
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大中臣能宣
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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水の面に照る月なみを数ふれば 今宵ぞ秋の最中なりける
- 次の歌
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秋の月西にあるかと見えつるは 更けゆく夜はの影にぞありける