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契りけん程や過ぎぬる秋の野に
人まつ虫の声の絶えせぬ

歌の意味
約束した頃がもう過ぎてしまったのだろうか。秋の野で、人を待つという名の松虫の声が絶えることなく続いている。
鑑賞
巻第三 秋歌 181

詞書「題しらず」
 訪れを約束した時はもう過ぎたのだろうか、秋の野では人を待つという松虫の声がやむことがないと詠む歌である。松虫の名に「人待つ」を響かせ、約束の人を待ちわびる心を虫の声に託している。

 初句「契りけん」は、約束したであろう、の意で、「けん」は過去推量の助動詞である。
 二句「程や過ぎぬる」は、その時が過ぎてしまったのか、の意で、「や」は疑問の係助詞であり、連体形の「ぬる」で結ぶ係り結びとなる。ここで句切れとなる。
 三句「秋の野に」は、秋の野で、の意である。
 四句「人まつ虫の」は、「まつ」に人を待つ意と、虫の名の松虫を掛けた掛詞である。本巻の第二百五首の四句にも同じ「人まつ虫の」が用いられ、松虫に待つ心を託す歌が巻の中で呼応している。
 結句「声の絶えせぬ」は、声が絶えない、の意で、連体形で止めて余韻を残している。

まつむし:人を待つ意と、虫の名の松虫を掛ける
ちぎる:約束する。契る
作者
よみ人しらず
出典
拾遺和歌集
前の歌
秋来れば機織る虫のあるなへに 唐錦にも見ゆる野辺かな
次の歌
露けくて我が衣手は濡れぬとも 折りてを行かん秋萩の花