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風寒み我が唐衣打つ時ぞ
萩の下葉も色まさりける

歌の意味
風が寒いので私が衣を砧で打つその時にこそ、萩の下葉もいっそう色が深まったことだ。
鑑賞
巻第三 秋歌 187

詞書「延喜御時の御屏風に」
 風が寒くなり、冬に備えて衣を砧で打つ頃こそ、萩の下葉も色づきを深めることだと詠む歌である。衣を打つ人の営みと萩の下葉の色の深まりとを重ね、晩秋の気配を描いている。詞書によれば、醍醐天皇の延喜の御代の屏風に添えた歌である。
 作者の「つらゆき」は紀貫之である。古今和歌集の撰者の中心人物で、仮名序を執筆し、土佐日記を著した。三十六歌仙に数えられる。

 初句「風寒み」は、風が寒いので、の意で、「〜み」は原因や理由を表す語法である。
 二句「我が唐衣」は、私の衣を、の意である。
 三句「打つ時ぞ」は、砧で打つ時に、の意で、「ぞ」は係助詞であり、結句の「ける」で結ぶ係り結びとなる。
 四句「萩の下葉も」は、萩の下の方の葉も、の意である。本巻の第百八十二首、第百八十三首では萩の花が詠まれたが、本歌では萩の下葉の色づきが詠まれ、花から葉へと目が移っている。
 結句「色まさりける」は、色がいっそう深まったことだ、の意で、連体形の「ける」で結ぶ。前歌の木の葉の色変わりに続き、秋の色づきを詠んでいる。

からころも:中国風の美しい衣。衣の美称
したば:草木の下の方の葉。下葉
作者
紀貫之
出典
拾遺和歌集
前の歌
千鳥鳴く佐保の川霧立ちぬらし 山の木の葉も色変はりゆく
次の歌
神奈備の御室の山を今日見れば 下草かけて色づきにけり