今よりは紅葉のもとに宿りせじ
惜しむに旅の日数経ぬべし
- 歌の意味
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これからは紅葉の木の下に宿りはするまい。散るのを惜しんでいるうちに、旅の日数がたってしまうにちがいないから。
- 鑑賞
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巻第三 秋歌 204
詞書「二条右大臣の粟田の山里の障子の絵に、旅人紅葉の下に宿りたる所」
紅葉の下に宿ると、散るのを惜しんで去りがたくなり、旅の日数ばかりが過ぎてしまうので、これからは紅葉の下には宿るまいと詠む歌である。紅葉への愛着の深さを、宿るまいという逆説的な決意によって表している。詞書によれば、二条右大臣すなわち藤原道兼の粟田の山荘の障子絵に、旅人が紅葉の下に宿っている場面が描かれていたのに添えた歌である。
作者の「恵慶法師」は、平安時代中期の僧、歌人である。河原院に住んだ安法法師のもとに集まった歌人たちと交流した。中古三十六歌仙に数えられる。
初句「今よりは」は、これからは、の意である。
二句「紅葉のもとに」は、紅葉の木の下に、の意である。
三句「宿りせじ」は、宿りはするまい、の意で、「じ」は打消意志の助動詞である。ここで句切れとなる。本巻の第百六十一首が女郎花の咲く野辺で旅寝をしようかと詠んだのに対し、本歌は紅葉のもとには宿るまいと決めており、花と紅葉とで、宿ろうとする心と宿るまいとする心とが反転している。
四句「惜しむに旅の」は、紅葉を惜しむうちに旅の、の意である。
結句「日数経ぬべし」は、日数がたってしまうにちがいない、の意で、「ぬべし」は強い推量を表す。倒置によって、宿るまいとする理由を後から示している。
さうじ:襖や衝立など、室内の仕切りに用いる建具。障子
あはた:山城国の粟田。藤原道兼の山荘があった
- 作者
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恵慶
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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湖に秋の山辺を映しては はたばり広き錦とぞ見る
- 次の歌
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訪ふ人も今はあらしの山風に 人まつ虫の声ぞ悲しき