あしひきの山かき曇り時雨るれど
紅葉はいとど照りまさりけり
- 歌の意味
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山が一面に曇って時雨が降るけれども、紅葉はいっそう照り輝きを増していることだ。
- 鑑賞
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巻第四 冬歌 215
詞書「延喜の御時、尚侍の賀の屏風に」
山が暗く曇って時雨が降っても、紅葉はかえっていっそう照り映えると詠む歌である。暗い空と明るい紅葉の色とを対照させ、時雨に染められて色を深める紅葉の美しさをたたえている。詞書によれば、醍醐天皇の延喜の御代に、尚侍の長寿を祝う屏風に添えた歌で、この尚侍は藤原満子とされる。祝いの屏風にふさわしく、衰えるどころかいよいよ輝きを増す紅葉を詠んでいる。
初句「あしひきの」は、「山」にかかる枕詞である。
二句「山かき曇り」は、山が一面に曇って、の意で、「かき」は意味を強める接頭語である。本巻の第二百十七首の初句「かきくらし」とともに、時雨を呼ぶ暗い空を描いている。
三句「時雨るれど」は、時雨が降るけれども、の意で、「ど」は逆接の接続助詞である。
四句「紅葉はいとど」は、紅葉はいっそう、の意である。時雨は木の葉を染めるものとされ、暗い空のもとで紅葉の明るさがきわだつ。
結句「照りまさりけり」は、照り輝きが増していることだ、の意で、「けり」は詠嘆の助動詞である。巻第三の巻末の第二百十四首が元結の霜で秋を送ったのを受け、冬の巻頭ではなお照り映える紅葉によって秋の名残をとどめている。本巻の巻末の第二百六十二首が明日の春を喜んで閉じるのと、巻頭と巻末で呼応している。
しぐる:時雨が降る。初冬に降ったりやんだりする雨が降る
ないしのかみ:内侍司の長官。尚侍
- 作者
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紀貫之
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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暮れてゆく秋の形見に置くものは 我が元結の霜にぞありける
- 次の歌
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綱代木にかけつつ洗ふ唐錦 日を経て寄する紅葉なりけり