おきあかす霜とともにや今朝はみな
冬の夜深き罪も消ぬらん
- 歌の意味
-
夜通し起きて明かした今朝は、夜通し置いた霜が消えるのとともに、冬の夜のように深い罪もみな消えたことだろうか。
- 鑑賞
-
巻第四 冬歌 257
詞書「屏風の絵に、仏名の所」
仏名会で夜通し起きて仏の名を唱え明かした朝、夜通し置いた霜が消えるのとともに、冬の夜のように深い罪もすべて消えたことだろうと詠む歌である。霜の消えることに罪の消えることを重ね、法会を終えた朝の清らかな心を表している。詞書によれば、屏風の絵に仏名会の場面が描かれていたのに添えた歌である。仏名会は、毎年十二月に宮中で三日間にわたり諸仏の名を唱え、一年の罪を懺悔して消滅を祈る法会である。
作者の「よしのふ」は大中臣能宣である。伊勢神宮の祭主を務めた大中臣氏の出で、梨壺の五人の一人として後撰和歌集の撰進と万葉集の訓読に携わった。三十六歌仙に数えられる。
初句「おきあかす」は、起きたまま夜を明かす意と、霜が置いたまま夜が明ける意とを掛ける。
二句「霜とともにや」は、霜とともに、の意で、「や」は疑問の係助詞である。
三句「今朝はみな」は、今朝はすべて、の意である。
四句「冬の夜深き」は、冬の夜の更けた深さに、罪の深さを重ねて「罪」を導いている。
結句「罪も消ぬらん」は、罪も消えたことだろうか、の意で、「ぬ」は完了の助動詞、係助詞「や」を受けて連体形「らん」で結ぶ。本巻の第二百五十八首も罪が雪とともに消えると詠み、仏名の歌が続く。
おきあかす:起きたまま夜を明かす意と、霜が置いたまま夜が明ける意とを掛ける
ぶつみやう:宮中で十二月に仏の名を唱えて一年の罪を懺悔する法会。仏名会
- 作者
-
大中臣能宣
- 出典
-
拾遺和歌集
- 前の歌
-
梅が枝に降り積む雪は一年に 二度咲ける花かとぞ見る
- 次の歌
-
年の内に積もれる罪はかきくらし 降る白雪とともに消えなん