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雪深き山路に何に帰るらん
春待つ花の陰にとまらで

歌の意味
雪の深い山道を、どうして帰っていくのだろうか。春を待つ花の陰にとどまらないで。
鑑賞
巻第四 冬歌 259

詞書「屏風の絵に、仏名の朝に、梅の木のもとに導師と主と、土器とりて別れ惜しみたる所」
 仏名会を終えて雪深い山道を帰っていく僧に、春を待つ梅の花の陰にとどまればよいのに、どうして帰るのかと別れを惜しむ歌である。雪の山路と春を待つ梅との対比に、名残を惜しむ主の心を表している。詞書によれば、屏風の絵に、仏名会の翌朝、梅の木のもとで導師と主人とが杯を交わして別れを惜しむ場面が描かれていたのに添えた歌である。
 作者の「よしのふ」は大中臣能宣である。伊勢神宮の祭主を務めた大中臣氏の出で、梨壺の五人の一人として後撰和歌集の撰進と万葉集の訓読に携わった。三十六歌仙に数えられる。

 初句「雪深き」は、雪の深い、の意である。
 二句「山路に何に」は、山道に、どうして、の意で、「何に」は理由を問う。
 三句「帰るらん」は、帰るのだろうか、の意で、「らん」は原因を推量する助動詞である。ここで句切れとなる。
 四句「春待つ花の」は、春を待つ花の、の意で、詞書の梅をさす。
 結句「陰にとまらで」は、陰にとどまらないで、の意で、「で」は打消の接続助詞である。倒置によって、とどまってほしい場所を後から示している。

だうし:法会で中心となって経文を唱え、儀式を導く僧
かはらけ:素焼きの杯
作者
大中臣能宣
出典
拾遺和歌集
前の歌
年の内に積もれる罪はかきくらし 降る白雪とともに消えなん
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人はいさ犯しやすらん冬来れば 年のみ積もる雪とこそ見れ