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山科の山の岩根に松を植ゑて
常磐堅磐に祈りつるかな

歌の意味
山科の山の岩の根もとに松を植えて、岩のように永久に変わらず栄えるようにと祈ったことだ。
鑑賞
巻第五 賀歌 273

詞書「天暦の帝四十になりおはしましける時、山科寺に金泥寿命経四十巻を書き供養し奉りて、御巻数鶴にくはせて洲浜に立てたりけり、その洲浜の敷物にあまたの歌葦手に書ける中に」
 山科の山の岩根に松を植えて、岩のように永久不変であるようにと天皇の長寿を祈ったと詠む歌である。動かない岩と常緑の松という二つの長寿の象徴を重ね、四十の賀の祝意を表している。詞書によれば、村上天皇が四十歳になった時、山科寺で金泥の寿命経四十巻を書写して供養し、その巻数を鶴の作り物にくわえさせて洲浜に立て、洲浜の敷物に葦手書きで多くの歌を書いた中の一首である。山科寺は興福寺の古い呼び名である。
 作者の「かねもり」は平兼盛である。光孝天皇の流れをくむ平氏の出で、平安時代中期の歌人である。天徳四年の内裏歌合での活躍で知られ、三十六歌仙に数えられる。

 初句「山科の」は、山城国の山科の、の意で、興福寺の前身が山科にあったことから興福寺を山科寺と呼んだのにちなんでいる。
 二句「山の岩根に」は、山の岩の根もとに、の意である。
 三句「松を植ゑて」は、松を植えて、の意で、六音の字余りである。本巻の第二百六十四首から続く松の歌に連なっている。
 四句「常磐堅磐に」は、岩のように永久に変わらず、の意で、「常磐」と「堅磐」を重ねて強めている。二句の「岩根」を受けている。
 結句「祈りつるかな」は、祈ったことだ、の意で、「つる」は完了の助動詞「つ」の連体形、「かな」は詠嘆である。次歌の第二百七十四首も同じ折の歌である。

ときはかきは:岩のように永久に変わらないこと
くわんじゆ:読誦した経の題目や度数を記して願主に贈る文書。巻数
すはま:州浜をかたどった台。祝いの飾り物をのせる
あしで:葦や水鳥などの絵に紛らせて文字を書く書き方。葦手
作者
平兼盛
出典
拾遺和歌集
前の歌
結ひ初むる初元結の濃紫 衣の色に移れとぞ思ふ
次の歌
声高く三笠の山ぞ呼ばふなる あめの下こそ楽しかるらし