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別るれば心をのみぞつくし櫛
さして逢ふべきほどを知らねば

歌の意味
別れてしまえば、ただ心を尽くして思うばかりだ。この筑紫櫛を挿すように、それと指して逢える時がいつとも知らないので。
鑑賞
巻第六 別歌 320

詞書「共政朝臣肥後守にて下り侍りけるに、妻の肥前が下り侍りければ、筑紫櫛、御衣など給ふとて」
 別れてしまえば心を尽くして思うばかりで、いつと指して逢えるかもわからないと詠む歌である。贈り物の筑紫櫛に寄せて、「尽くし」と「筑紫」、「挿して」と「指して」とを掛け、仕えた女房との別れを惜しむ心を表している。詞書によれば、共政朝臣が肥後守として下る時、その妻で宮中に仕えていた肥前も同行したので、筑紫櫛や御衣などを与えるにあたって詠んだ歌である。
 作者の「天暦御製」は村上天皇である。醍醐天皇の皇子で、その治世は天暦の治と称えられた。梨壺に和歌所を置き、後撰和歌集の撰進を命じた。

 初句「別るれば」は、別れてしまうと、の意で、已然形に「ば」がついて、そうなるといつも、の意を表す。本巻の第三百二十四首の初句も同じ「別るれば」で始まっている。
 二句「心をのみぞ」は、心ばかりを、の意で、係助詞「ぞ」による強調である。
 三句「つくし櫛」は、心を「尽くし」と、九州の古名の「筑紫」とを掛け、筑紫で作られた櫛をいう。肥後は筑紫の国の一つであり、任地にもちなんでいる。
 四句「さして逢ふべき」は、櫛を「挿して」と、それと「指して」とを掛け、いつと定めて逢うことのできる、の意となる。「挿す」は櫛の縁語である。
 結句「ほどを知らねば」は、時を知らないので、の意で、倒置によって理由を後に示している。

つくし:心を尽くす意と、九州の古名の筑紫とを掛ける
さす:櫛を挿す意と、それと指し示す意とを掛ける
つくしぐし:筑紫で作られた櫛
おほんぞ:天皇や貴人の衣服。御衣
作者
村上天皇
出典
拾遺和歌集
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月影は飽かず見るとも更級の 山の麓に長居すな君
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