女郎花我に宿貸せいなみ野の
いなと言ふともここを過ぎめや
- 歌の意味
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女郎花よ、私に宿を貸してくれ。印南野の名のように否と言ったとしても、ここを通り過ぎたりするものか。
- 鑑賞
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巻第六 別歌 348
詞書「秋、旅にまかりけるに、印南野に宿りて」
印南野に咲く女郎花に宿を貸せと呼びかけ、たとえ「否」と断られても、ここを通り過ぎはしないと詠む歌である。女郎花を女性に見立て、地名の「否み」を断りの言葉に転じた戯れの中に、秋の野の花への深い愛着を表している。詞書によれば、秋に旅をして印南野に宿った時の歌である。
作者の「よしのふ」は大中臣能宣である。伊勢神宮の祭主を務めた大中臣氏の出で、梨壺の五人の一人として後撰和歌集の撰進と万葉集の訓読に携わった。三十六歌仙に数えられる。
初句「女郎花」は、秋の七草の一つで、その名から女性に見立てて詠まれることが多い。
二句「我に宿貸せ」は、私に宿を貸してくれ、の意で、「貸せ」は命令形である。ここで句切れとなる。
三句「いなみ野の」は、播磨国の歌枕の印南野と、断る意の「否み」とを掛け、同音の繰り返しで四句の「いな」を導く序の働きをしている。
四句「いなと言ふとも」は、否と言ったとしても、の意で、「とも」は逆接の仮定を表す。
結句「ここを過ぎめや」は、ここを通り過ぎようか、の意で、「め」は推量の助動詞「む」の已然形、「や」は反語を表す。
いなみ:播磨国の歌枕の印南野と、断る意の否みとを掛ける
をみなへし:秋の七草の一つ。女性に見立てられる
やどる:旅先で泊まる
- 作者
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大中臣能宣
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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遥かなる旅の空にも後れねば うらやましきは秋の夜の月
- 次の歌
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船路には草の枕も結ばねば おきながらこそ夢も見えけれ