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松の音は秋の調べに聞こゆなり
高くせめあげて鳥ぞひくらし

歌の意味
松を渡る音は、秋の調べのように聞こえる。弦を高く締め上げて、鳥が奏でているらしい。
鑑賞
巻第七 物名 372

詞書「ひぐらし」
 松を渡る音が秋の調べのように聞こえるのは、弦を高く締め上げて鳥が奏でているらしいと詠む歌である。松の音を琴の音色に見立て、調べ、せめあぐ、弾くと琴の縁の語を連ね、結句の「ひくらし」に、詞書の「ひぐらし」の名を隠している。詞書の「ひぐらし」は、この歌に詠み込まれた物の名である。
 作者の「つらゆき」は紀貫之である。古今和歌集の撰者の中心人物で、仮名序を執筆し、土佐日記を著した。三十六歌仙に数えられる。
 なお本文の結句は「鳥そ」とあり、読み仮名の行の「かせそ」と一致しない。ここでは本文の表記に従う。

 初句「松の音は」は、松を渡る音は、の意である。
 二句「秋の調べに」は、秋の曲の調べとして、の意で、松の音を琴の音色に見立てている。
 三句「聞こゆなり」は、聞こえる、の意で、ここで句切れとなる。
 四句「高くせめあげて」は、琴の弦を締めて調子を高く張り上げて、の意で、八音の字余りである。
 結句「鳥ぞひくらし」は、鳥が奏でているらしい、の意で、「弾くらし」に「ひぐらし」の名を隠し、係助詞「ぞ」を受けて連体形「らし」で結ぶ。一連の三首はいずれも「くらし」の音にひぐらしを隠している。

ひぐらし:蜩。「弾くらし」の音の続きに隠して詠み込む
せめあぐ:琴の弦を締めて調子を高くする
しらべ:音楽の調子。楽の音
作者
紀貫之
出典
拾遺和歌集
前の歌
杣人は宮木ひくらしあしひきの 山の山彦声とよむなり
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あだなりとひともときくる野辺しもぞ 花のあたりを過ぎがてにする