水もなく舟も通はぬこのしまに
いかでかあまのなまめかるらん
- 歌の意味
-
水もなく、舟も通わないこの島に、どうして海人ならぬ尼が、なまめかしくふるまっているのだろうか。
- 鑑賞
-
巻第七 物名 378
詞書「木島に尼の詣でたりけるを見て」
水もなく舟も通わない木島に、どうして海人ならぬ尼がなまめいた様子でいるのだろうかと戯れる歌である。詞書によれば、山城国の木島に尼が参詣したのを見て詠んだ歌である。詞書の木島と尼を、歌の中で「この島」と「海人」に掛け、島にいるはずの海人を持ち出して機知に転じている。
作者の「すけみ」は藤原輔相である。藤原弘経の子で、藤六と呼ばれた平安時代中期の歌人である。物名の歌を得意とし、家集に藤六集がある。
初句「水もなく」は、水もなく、の意である。
二句「舟も通はぬ」は、舟も通わない、の意である。初句とともに、島であるのに海がないことをいう。
三句「このしまに」は、この島に、の意と、山城国の木島とを掛けている。前歌の洲に続き、水辺の地名が詠まれる。
四句「いかでかあまの」は、どうして海人が、の意で、「海人」と「尼」とを掛けている。「か」は疑問の係助詞である。
結句「なまめかるらん」は、なまめいているのだろうか、の意で、係助詞「か」を受けて連体形「らん」で結ぶ。
このしま:この島の意と、山城国の木島とを掛ける
あま:海で魚介をとる海人と、出家した女性の尼とを掛ける
なまめく:若々しく優美にふるまう
まうづ:神社や寺に参る。詣づ
- 作者
-
藤原輔相
- 出典
-
拾遺和歌集
- 前の歌
-
白浪のうちかくるすの乾かぬに 我が袂こそ劣らざりけれ
- 次の歌
-
植ゑて去にし人も見なくに秋萩の 誰見よとかは花の咲きけむ