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あしひきの山下水に濡れにけり
その火まづたけ衣あぶらん

歌の意味
山の下を流れる水に濡れてしまった。その火をまず焚け、衣をあぶって乾かそう。
鑑賞
巻第七 物名 396

詞書「まつたけ」
 山の下を流れる水に濡れてしまったので、まず火を焚け、衣をあぶって乾かそうと詠む歌である。山道で濡れた身の素朴な求めを詠み、四句の「その火まづたけ」の音の続きに、詞書の「松茸」の名を隠している。詞書の「まつたけ」は、この歌に詠み込まれた物の名である。
 作者の「すけみ」は藤原輔相である。藤原弘経の子で、藤六と呼ばれた平安時代中期の歌人である。物名の歌を得意とし、家集に藤六集がある。

 初句「あしひきの」は、山にかかる枕詞である。
 二句「山下水に」は、山のふもとや木陰を流れる水に、の意である。
 三句「濡れにけり」は、濡れてしまったことだ、の意で、ここで句切れとなる。
 四句「その火まづたけ」は、その火をまず焚け、の意で、「まづたけ」に「まつたけ」の名を隠している。次歌の第三百九十七首も同じ題で、松茸の歌が二首並ぶ。
 結句「衣あぶらん」は、衣をあぶって乾かそう、の意で、「らん」は意志を表す。

まつたけ:松茸。「まづ焚け」の音の続きに隠して詠み込む
やましたみづ:山のふもとや木陰を流れる水
あぶる:火にかざして乾かす
作者
藤原輔相
出典
拾遺和歌集
前の歌
池をはりこめたる水の多かれば 井樋の口よりあまるなるべし
次の歌
厭へどもつらき形見を見る時は まづたけからぬ音こそ泣かるれ