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いにしへはおごれりしかどわびぬれば
とねりがきぬも今は着つべし

歌の意味
昔はおごり高ぶっていたけれども、落ちぶれてしまったので、舎人の着る粗末な衣も、今は着るにちがいない。
鑑賞
巻第七 物名 394

詞書「ねりかき」
 昔はおごり高ぶっていたが、落ちぶれてしまった今は、舎人の着る粗末な衣でも着るにちがいないと詠む歌である。栄華から落ちぶれた身の上を自嘲する趣の中に、四句の「とねりがきぬ」の音の続きに、詞書の「ねりかき」の名を隠している。詞書の「ねりかき」は、この歌に詠み込まれた物の名である。
 作者の「すけみ」は藤原輔相である。藤原弘経の子で、藤六と呼ばれた平安時代中期の歌人である。物名の歌を得意とし、家集に藤六集がある。

 初句「いにしへは」は、昔は、の意である。
 二句「おごれりしかど」は、おごり高ぶっていたけれども、の意で、「り」は存続、「しか」は過去の助動詞「き」の已然形、「ど」は逆接の接続助詞である。
 三句「わびぬれば」は、落ちぶれてしまったので、の意で、已然形に「ば」がついて理由を表す。
 四句「とねりがきぬも」は、舎人の衣も、の意で、「ねりがき」の名を隠している。前歌までの木の実に続き、ここから食べ物の名を隠す歌が続いていく。
 結句「今は着つべし」は、今は着るにちがいない、の意で、「つ」は完了、「べし」は推量の助動詞である。初句の「いにしへ」と「今」とが対をなしている。

ねりがき:練柿。柿の一種とされる。「舎人が衣」の音の続きに隠して詠み込む
とねり:皇族や貴族に仕えて雑務をした下級の役人。舎人
わぶ:落ちぶれる。困窮する
作者
藤原輔相
出典
拾遺和歌集
前の歌
面影にしばしばみゆる君なれど 恋しきことぞ時ぞともなき
次の歌
池をはりこめたる水の多かれば 井樋の口よりあまるなるべし