古典和歌stream

志深き時には底のもも
潜き出でぬるものにぞありける

歌の意味
志が深い時には、水の底の藻までも潜って取り出してくるものであったのだ。
鑑賞
巻第七 物名 392

詞書「もも」
 志が深い時には、水の底の藻までも潜って取り出してくるものだと詠む歌である。志の深さを水の深さに重ね、三句の「底のもも」の音の続きに、詞書の「桃」の名を隠している。詞書の「もも」は、この歌に詠み込まれた物の名である。
 作者の「すけみ」は藤原輔相である。藤原弘経の子で、藤六と呼ばれた平安時代中期の歌人である。物名の歌を得意とし、家集に藤六集がある。

 初句「志」は、心に深く思うこと、の意である。
 二句「深き時には」は、深い時には、の意で、志の深さと水の深さとを重ねている。
 三句「底のもも」は、水の底の藻も、の意で、「もも」に「桃」の名を隠している。前歌までの鳥や虫の名に続き、ここから果実の名が詠まれる。
 四句「潜き出でぬる」は、潜って取り出してくる、の意である。
 結句「ものにぞありける」は、ものであったのだ、の意で、係助詞「ぞ」を受けて連体形「ける」で結ぶ。

もも:桃。「底の藻も」の音の続きに隠して詠み込む
も:水中に生える草。藻
かづく:水に潜って物をとる。潜く
作者
藤原輔相
出典
拾遺和歌集
前の歌
五月雨にならぬ限りは郭公 何かはなかむしのぶばかりに
次の歌
面影にしばしばみゆる君なれど 恋しきことぞ時ぞともなき