かのかはのむかはぎ過ぎて深からば
渡らでただに帰るばかりぞ
- 歌の意味
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あの川が、向こう脛を越えるほど深いならば、渡らずに、そのまま帰るだけだ。
- 鑑賞
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巻第七 物名 426
詞書「かのかはのむかはき」
あの川が向こう脛を越えるほど深いならば、渡らずにそのまま帰るだけだと詠む歌である。無理をせずに引き返す気楽な心を詠み、初句から二句にかけての「かのかはのむかはき」の音の続きに、詞書の「鹿の皮の行縢」の名を隠している。詞書の「かのかはのむかはき」は、この歌に詠み込まれた物の名である。
作者の「すけみ」は藤原輔相である。藤原弘経の子で、藤六と呼ばれた平安時代中期の歌人である。物名の歌を得意とし、家集に藤六集がある。
初句「かのかはの」は、あの川の、の意である。
二句「むかはぎ過ぎて」は、向こう脛を越えて、の意で、初句と続けて「かのかはのむかばき」の名を隠している。前歌の豹の皮に続き、獣の皮の名が詠まれる。
三句「深からば」は、深いならば、の意で、未然形に「ば」がついて仮定を表す。
四句「渡らでただに」は、渡らずにそのまま、の意で、「で」は打消の接続助詞である。
結句「帰るばかりぞ」は、帰るだけだ、の意で、「ぞ」は文末で強める終助詞である。
かのかはのむかばき:鹿の皮の行縢。鹿の毛皮で作り、狩りや旅で脚を覆うもの。「かの川の向脛」の音の続きに隠して詠み込む
むかはぎ:すねの前面。向脛
- 作者
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藤原輔相
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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そこへうのかは浪分けて入りぬるか 待つほど過ぎて見えずもあるかな
- 次の歌
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かのえさる舟待てしばし言問はん 沖の白波まだ立たぬまに