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山高み花の色をも見るべきに
にくくたちぬる春霞かな

歌の意味
山が高いので、花の色も見ることができるはずなのに、憎らしくも立ちこめてしまった春霞であることだ。
鑑賞
巻第七 物名 398

詞書「くくたち」
 山が高いので遠くからでも花の色が見えるはずなのに、憎らしくも春霞が立ちこめてしまったと嘆く歌である。花を隠す霞を恨む春の歌の趣の中に、四句の「にくくたちぬる」の音の続きに、詞書の「茎立」の名を隠している。詞書の「くくたち」は、この歌に詠み込まれた物の名である。
 作者の「すけみ」は藤原輔相である。藤原弘経の子で、藤六と呼ばれた平安時代中期の歌人である。物名の歌を得意とし、家集に藤六集がある。

 初句「山高み」は、山が高いので、の意で、形容詞の語幹に「み」がついて理由を表す。
 二句「花の色をも」は、花の色をも、の意である。
 三句「見るべきに」は、見ることができるはずなのに、の意で、「に」は逆接を表す。
 四句「にくくたちぬる」は、憎らしくも立ちこめてしまった、の意で、「くくたち」の名を隠している。前々歌から続く食べ物の名を隠す歌である。
 結句「春霞かな」は、春霞であることだ、の意で、「かな」は詠嘆である。

くくたち:茎立。菜などの茎が伸びたもので、食用とした。「憎く立ちぬる」の音の続きに隠して詠み込む
作者
藤原輔相
出典
拾遺和歌集
前の歌
厭へどもつらき形見を見る時は まづたけからぬ音こそ泣かるれ
次の歌
野を見れば春めきにけり青つづら こにやくままし若菜摘むべく