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かのえさる舟待てしばし言問はん
沖の白波まだ立たぬまに

歌の意味
あの入り江を去っていく舟よ、しばらく待て。ものを尋ねよう。沖の白波がまだ立たないうちに。
鑑賞
巻第七 物名 427

詞書「かのえさる」
 あの入り江を去っていく舟に、沖の白波がまだ立たないうちにしばらく待て、ものを尋ねようと呼びかける歌である。出てゆく舟を引き留める心を詠み、初句の「かのえさる」の音の続きに、詞書の「庚申」の名を隠している。詞書の「かのえさる」は、この歌に詠み込まれた物の名である。
 作者の「すけみ」は藤原輔相である。藤原弘経の子で、藤六と呼ばれた平安時代中期の歌人である。物名の歌を得意とし、家集に藤六集がある。

 初句「かのえさる」は、あの入り江を去っていく、の意で、「かのえさる」の名を隠している。前歌の「かのかは」と同じく「かの」で始まり、ここから干支の名を隠す歌が続いていく。
 二句「舟待てしばし」は、舟よ、しばらく待て、の意で、「待て」は命令形である。ここで句切れとなる。
 三句「言問はん」は、ものを尋ねよう、の意で、「ん」は意志の助動詞である。ここで句切れとなる。
 四句「沖の白波」は、沖の白波が、の意である。
 結句「まだ立たぬまに」は、まだ立たないうちに、の意で、倒置によって二句の呼びかけに続けている。

かのえさる:庚申。干支の一つ。「かの江去る」の音の続きに隠して詠み込む
こととふ:ものを尋ねる
作者
藤原輔相
出典
拾遺和歌集
前の歌
かのかはのむかはぎ過ぎて深からば 渡らでただに帰るばかりぞ
次の歌
さをしかのとも惑はせる声すなり 妻や恋しき秋の山辺に