琴の音に峰の松風通ふらし
いづれのをより調べ初めけん
- 歌の意味
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琴の音に峰の松風の音が通い合っているらしい。いったいどの琴の緒から、どの峰の尾から、この調べを奏で始めたのだろうか。
- 鑑賞
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巻第八 雑歌上 451
詞書「野の宮に斎宮の庚申し侍りけるに、松風入夜琴といふ題を詠み侍りける」
琴の音に峰の松風が通い合っているらしい、どの緒から、どの尾から奏で始めたのだろうかと詠む歌である。詞書から、娘の斎宮が野宮で庚申の夜を過ごした折、「松風入夜琴」の題で詠んだ歌とわかる。松風の音と琴の音とが溶け合う夜の情景を、「緒」と「尾」の掛詞によって巧みに表しており、作者の代表作として名高い。次歌の第四百五十二首は同じ席で詠んだ歌である。
作者の「斎宮女御」は徽子女王である。醍醐天皇の皇子重明親王の娘で、斎宮を務めたのち村上天皇の女御となり、規子内親王を産んだ。三十六歌仙に数えられる。
この歌は和漢朗詠集にも採られ、後世、琴と松風を詠む歌の手本として重んじられた。
初句「琴の音に」は、琴の音に、の意である。
二句「峰の松風」は、峰を吹く松風、の意である。本巻の第四百五十三首、第四百五十四首にも松に吹く風が詠まれている。
三句「通ふらし」は、通い合っているらしい、の意で、「らし」は根拠のある推定の助動詞である。ここで句切れとなる。
四句「いづれのをより」は、どの緒から、の意である。「を」は琴の弦である「緒」と、峰の尾根である「尾」とを掛けた掛詞で、琴と峰の両方を一語で結んでいる。
結句「調べ初めけん」は、奏で始めたのだろうか、の意で、「けん」は過去推量の助動詞である。松風と琴の音とが、どちらから鳴り始めたのか分からないほど一つになっている様子を表している。
を:琴の弦の緒と、峰の尾根の尾を掛ける
しらぶ:楽器を奏でる
かうしん:庚申の夜に眠らずに過ごす行事
- 作者
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徽子女王
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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大空を眺めぞ暮らす吹く風の 音はすれども目にも見えねば
- 次の歌
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松風の音に乱るる琴の音を ひけば子の日の心地こそすれ