白波の打ちやかへすと待つほどに
浜の真砂の数ぞ積もれる
- 歌の意味
-
白波が打ち返すように、あなたが打ち返して勝つかと待っているうちに、浜の真砂のように私の勝ちの数が積もってしまった。
- 鑑賞
-
巻第九 雑歌下 552
詞書「天暦の御時、一条摂政蔵人頭にて侍りけるに、帯を賭けて御碁遊ばしける、負け奉りて御数多くなり侍りければ、帯を返し給ふとて」
白波が打ち返すように、そちらが打ち返して勝つかと待つうちに、浜の真砂のように勝ちの数が積もってしまったと詠む歌である。詞書から、村上天皇の時代に、蔵人頭であった一条摂政藤原伊尹と帯を賭けて碁を打ち、伊尹が負けて天皇の勝ち数が多くなったので、賭けの帯を返し与えるときに詠んだ歌とわかる。白波と浜の真砂という海辺の景を用い、勝負に勝ちすぎたことを鷹揚に詠みつつ、帯を返す思いやりを示している。
作者の「御製」は村上天皇である。醍醐天皇の皇子で、その治世は天暦の治とたたえられ、後撰和歌集の撰進を命じた。一条摂政は藤原伊尹で、藤原師輔の長男である。
初句「白波の」は、白い波が、の意で、波が浜に打ち寄せる景を詠んでいる。
二句「打ちやかへすと」は、打ち返すかと、の意で、波が「打ち返す」に、碁を「打つ」意を響かせている。「かへす」は波が打ち返す意と、賭けの帯を返す意を掛ける掛詞である。
三句「待つほどに」は、待っているうちに、の意である。
四句「浜の真砂の」は、浜の細かい砂の、の意で、数の多いことのたとえである。次歌の第五百五十三首と第五百五十四首の三句「浜千鳥」と、浜の景を共有している。
結句「数ぞ積もれる」は、数が積もってしまった、の意で、碁の勝ち数をいう。係助詞「ぞ」を受けて存続の助動詞「り」の連体形「る」で結ぶ係り結びである。
まさご:真砂。細かい砂
かへす:波が打ち「返す」意と、帯を「返す」意を掛ける
くらうどのとう:蔵人頭。蔵人所の長官
- 作者
-
村上天皇
- 出典
-
拾遺和歌集
- 前の歌
-
河柳糸は緑にあるものを いづれかあけの衣なるらん
- 次の歌
-
いつしかと開けて見たれば浜千鳥 跡あることに跡のなきかな