滞る時もあらじな近江なる
おものの浜の海人のひつぎは
- 歌の意味
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滞る時もないだろうな。近江にあるおものの浜の海人が、日ごとに奉る御膳の品は。
- 鑑賞
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巻第十 神楽歌 608
詞書「安和元年大嘗会風俗:おものの浜」
近江のおものの浜の海人が日ごとに奉る御膳の品は、滞る時もないだろうと詠む歌である。地名の「おもの」に天皇の召し上がる「御膳」を掛け、海人が日々絶えず貢ぎ物を奉るさまに、豊かで平穏な御代を祝っている。安和元年の大嘗会の風俗の一連を結ぶ歌である。
詞書の「安和元年大嘗会風俗」は、冷泉天皇の即位に伴って安和元年に行われた大嘗会で奉られた風俗の歌であることを示す。大嘗会では、悠紀と主基に選ばれた国の地名を詠み込んだ歌が奉られ、ここから第六百八首まで、その国の山や浜の名を題とする歌が並ぶ。
作者の「かねもり」は平兼盛である。光孝天皇の流れをくむ篤行王の子で、臣籍に降って平氏となった。三十六歌仙に数えられ、天徳内裏歌合で壬生忠見と競った百人一首の「しのぶれど」の歌で知られる。
初句「滞る」は、滞る、の意で、貢ぎ物が途絶えることをいう。
二句「時もあらじな」は、時もないだろうな、の意で、「じ」は打消推量の助動詞、「な」は詠嘆の終助詞である。ここで句切れとなる二句切れの歌で、下の句は主語を倒置して示している。
三句「近江なる」は、近江国にある、の意で、第六百十首の初句「近江なる」と同じ句である。
四句「おものの浜の」は、「おもの」が題の地名と、天皇の食事である「御膳」を掛ける掛詞である。
結句「海人のひつぎは」は、海人が日ごとに奉る貢ぎ物は、の意である。
おもの:題の地名と、天皇の食事である「御膳」を掛ける
ひつぎ:日次。日ごとに奉る貢ぎ物
あま:海人。漁をする人
- 作者
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平兼盛
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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千歳経る松が崎には群れゐつつ 鶴さへ遊ぶ心あるらし
- 次の歌
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今年より千歳の山は声絶えず 君が御代をぞ祈るべらなる