古典和歌stream

いかにしてしばし忘れん命だに
あらば逢ふ夜のありもこそすれ

歌の意味
なんとかして、しばらくの間でもこの恋を忘れたいものだ。命さえあれば、逢える夜もあるかもしれないのだから。
鑑賞
巻第十一 恋歌一 646

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 恋の苦しさに命が絶えてしまわないよう、なんとかしてしばらくでも忘れたい、命さえあれば逢う夜もあるかもしれないから、と詠む歌である。恋い死にを恐れ、わずかな望みにすがって生き延びようとする心を表している。第六百四十二首の「命は限りあるものを」と同じく命と恋を詠み、命を保って逢う日を待とうとする点で、第六百九十二首の「頼むるにだに延ぶる命」にも通じる。

 初句「いかにして」は、どのようにして、なんとかして、の意である。
 二句「しばし忘れん」は、しばらくでも忘れたい、の意で、「ん」は意志の助動詞である。ここで句切れとなる二句切れの歌である。
 三句「命だに」は、命さえ、の意で、「だに」は最小限の限定を表す。
 四句「あらば逢ふ夜の」は、あるならば逢う夜が、の意で、「ば」は未然形について仮定を表す。
 結句「ありもこそすれ」は、あるかもしれない、の意で、「もこそ」はそうなるかもしれないという予想を表し、係助詞「こそ」を受けて已然形の「すれ」で結んでいる。

あふよ:逢ふ夜。恋人と逢う夜
作者
よみ人しらず
出典
拾遺和歌集
前の歌
あしひきの山下とよみ行く水の 時ぞともなく恋ひわたるかな
次の歌
貫き乱る涙の玉もとまるやと 玉の緒ばかり逢はむと言はなん