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玉垂れのすける心と見てしより
つらしてふことかけぬ日はなし

歌の意味
玉垂れが透けて見えるように、あなたが浮ついた好き心の人だと見てからというもの、つらいという言葉を口にしない日はない。
鑑賞
巻第十一 恋歌一 664

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 玉垂れが透けて見えるように、相手を浮ついた好き心の人だと見抜いてからは、つらいと口にしない日はないと詠む歌である。前歌の第六百六十三首と同じく「すける」に「透ける」と「好ける」を掛けるが、前歌が自分の恋心を「すける心」としたのに対し、この歌は相手の移り気を「すける心」と見ており、同じ語で反転した構図となっている。「かけぬ」は玉垂れを掛ける縁で用いられている。

 初句「玉垂れの」は、玉簾の、の意で、二句の「すける」にかかる。前歌の第六百六十三首の初句「玉簾」と同じものをいう。
 二句「すける心と」は、「すける」が玉垂れの「透ける」と、浮気な意の「好ける」を掛ける掛詞である。前歌の四句「すける心は」と同じ語で、ここでは相手の移り気をいう。
 三句「見てしより」は、見てからというもの、の意で、「て」は完了の助動詞「つ」の連用形、「し」は過去の助動詞「き」の連体形である。
 四句「つらしてふこと」は、つらいという言葉を、の意で、「てふ」は「といふ」がつまった形である。
 結句「かけぬ日はなし」は、口にかけない日はない、の意で、「かけ」は玉垂れを「掛け」る縁語である。前歌の結句「思ひかけてき」と「かく」の語を共有し、第六百九十七首の結句「恋ひぬ日はなし」と同じ形で結んでいる。

たまだれ:玉垂れ。玉簾
すく:簾が「透く」意と、浮気な意の「好く」を掛ける
かく:掛く。言葉を口にかける。簾を掛ける意を響かせる
作者
よみ人しらず
出典
拾遺和歌集
前の歌
玉簾糸の絶え間に人を見て すける心は思ひかけてき
次の歌
我こそや見ぬ人恋ふる病すれ あふひならでは止む薬なし