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唐衣我は刀の触れなくに
まづたつものはなき名なりけり

歌の意味
唐衣に刀を触れてもいないのに裁たれるように、私はあの人に触れてもいないのに、まず立つものは身に覚えのない浮き名であった。
鑑賞
巻第十二 恋歌二 704

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 唐衣に刀を当ててもいないのに、まず裁たれるように立つのは身に覚えのない浮き名であったと詠む歌である。衣を裁つ刃物の「刀」を唐衣の縁語として置き、「たつ」に衣を「裁つ」と浮き名が「立つ」を掛けている。相手に触れてもいないのに噂だけが先に立つ理不尽さを、衣を仕立てる手順になぞらえて嘆いている。前歌の第七百三首に続いて、唐衣の縁語で浮き名を詠んでいる。

 初句「唐衣」は、美しい衣の意で、前歌の第七百三首の三句「唐衣」と同じ語である。
 二句「我は刀の」は、私は刀を、の意で、刀は衣を裁つ刃物として唐衣の縁語となっている。
 三句「触れなくに」は、触れてもいないのに、の意で、「なくに」は逆接を表す。相手に触れていない意を重ねている。
 四句「まづたつものは」は、「たつ」が衣を「裁つ」と、浮き名が「立つ」を掛ける掛詞である。
 結句「なき名なりけり」は、身に覚えのない浮き名であった、の意で、「けり」は気づきの詠嘆を表す。巻頭の第六百九十八首から続く、なき名の一連の語である。

たつ:衣を「裁つ」意と、浮き名が「立つ」意を掛ける
かたな:刀。衣を裁つ刃物
作者
よみ人しらず
出典
拾遺和歌集
前の歌
あぢきなや我が名はたちて唐衣 身にもならさでやみぬべきかな
次の歌
染川に宿かる波の早ければ なき名立つとも今は恨みじ