葛城や我やは久米の橋作り
明けゆくほどはものをこそ思へ
- 歌の意味
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私は葛城の久米の岩橋を造る神ででもあるというのか。そうでもないのに、夜が明けていくころには、ひどく物思いをすることだ。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 719
葛城の久米の岩橋を造った神でもあるまいに、夜が明けていくころにはひどく物思いをすると詠む歌である。役行者が葛城山と吉野の金峰山の間に岩橋を架けるよう命じた際、葛城の一言主神が容貌の醜さを恥じて夜しか働かず、橋は完成しなかったという伝説を踏まえている。夜明けとともに逢瀬を終えなければならない身を、夜明けを恐れた神になぞらえ、明け方の憂いを表している。
初句「葛城や」は、大和国の葛城の、の意で、「や」は詠嘆を表す間投助詞である。
二句「我やは久米の」は、私は久米の、の意で、「やは」は反語を表す。私は久米の岩橋を造る神でもあるまいに、の意となる。
三句「橋作り」は、橋を造るもの、の意で、葛城の一言主神が夜の間だけ岩橋を造ったという伝説をいう。ここで句切れとなる三句切れの歌である。
四句「明けゆくほどは」は、夜が明けていくころは、の意で、第七百十七首の三句「明けゆかば」と、夜明けを嘆く心を共有している。
結句「ものをこそ思へ」は、物思いをすることだ、の意で、係助詞「こそ」を受けて已然形の「思へ」で結ぶ係り結びである。
くめのいはばし:久米の岩橋。葛城の一言主神が夜の間だけ架けたという伝説の橋
ものおもふ:物思ふ。思い悩む
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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独り寝し時は待たれし鳥の音も まれに逢ふ夜はわびしかりけり
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朝まだき露分け来つる衣手の ひるまばかりに恋しきやなぞ