現にも夢にも人に夜し逢へば
暮れゆくばかりうれしきはなし
- 歌の意味
-
現実でも夢でも、あの人には夜に逢えるのだから、日が暮れていくことほどうれしいものはない。
- 鑑賞
-
巻第十二 恋歌二 725
詞書は前の歌に続き「題しらず」
現実でも夢でも恋しい人には夜に逢うのだから、日が暮れていくことほどうれしいものはないと詠む歌である。逢瀬も夢での逢瀬も夜にしかないことから、夜をもたらす日暮れを何よりの喜びとしている。第七百二十二首と同じく日暮れを喜ぶ心を詠み、次歌の第七百二十六首は同じ日暮れを暁の別れを思って素直に喜べないと詠んで、対をなしている。
初句「現にも」は、現実にも、の意である。
二句「夢にも人に」は、夢の中でもあの人に、の意で、現実と夢を並べている。
三句「夜し逢へば」は、夜に逢うのだから、の意で、「し」は強めの副助詞、「ば」は已然形について原因を表す。
四句「暮れゆくばかり」は、日が暮れていくことほど、の意で、次歌の第七百二十六首の四句「暮れ行く空は」と同じ語を共有している。
結句「うれしきはなし」は、うれしいものはない、の意で、次歌の結句「うれしからまし」と対をなしている。
うつつ:現。現実
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
拾遺和歌集
- 前の歌
-
百羽がき羽かく鴫も我がごとく 朝わびしき数はまさらじ
- 次の歌
-
暁の別れの道を思はずは 暮れ行く空はうれしからまし