朝氷とくる間もなき君により
などてそほつる袂なるらん
- 歌の意味
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朝の氷が解ける間もないように、少しも打ち解けてくれないあなたのために、どうしてこれほど濡れる私の袂なのだろう。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 729
詞書「女につかはしける」
朝の氷が解ける間もないように少しも打ち解けてくれないあなたのせいで、どうして私の袂はこんなに濡れるのだろうと詠む歌である。詞書から、女のもとに贈った歌とわかる。「とくる」に氷が「解くる」と心が「打ち解くる」を掛け、氷は解けないのに袂は涙に濡れるという矛盾をついて、つれない相手への恨みを表している。第七百二十七首の凍る涙、第七百二十八首の白雪に続き、冬の景物に託した歌である。
作者の「よしのぶ」は大中臣能宣である。伊勢神宮の祭主を務め、梨壺の五人の一人として後撰和歌集の撰進にあたった。三十六歌仙に数えられる。
初句「朝氷」は、朝に張る氷、の意である。
二句「とくる間もなき」は、「とくる」が氷が「解くる」と、心が「打ち解くる」を掛ける掛詞である。本巻の第七百二十七首の四句「心とけたる」と同じ趣向である。
三句「君により」は、あなたのせいで、の意である。
四句「などてそほつる」は、どうして濡れる、の意で、「そほつ」はびっしょり濡れる意である。氷が解けないのに袂が濡れるという矛盾を問うている。本巻の第七百六十一首の結句「まづそほつらむ」と同じ語である。
結句「袂なるらん」は、袂なのだろう、の意で、「らん」は原因を推量する助動詞である。
とく:氷が「解く」意と、心が「打ち解く」意を掛ける
そほつ:びっしょり濡れる
たもと:袂。袖
- 作者
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大中臣能宣
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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かからでもありにしものを白雪の ひと日もふれば増さる我が恋
- 次の歌
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身をつめば露をあはれと思ふかな 暁ごとにいかでおくらん