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憂しと思ふものから人の恋しきは
いづこをしのぶ心なるらん

歌の意味
つらい人だと思うものの、それでもあの人が恋しいのは、いったいどこを慕う心なのだろうか。
鑑賞
巻第十二 恋歌二 731

詞書は前の歌に続き「女につかはしける」
 あの人をつらい人だと思いながら、それでも恋しいのは、あの人のどこを慕う心なのだろうと詠む歌である。相手のつれなさを恨みつつも思いを断ち切れない自分の心を、いぶかしむ形で表している。この歌は、本集の巻第十五の第九百四十四首にも重ねて収められている。

 初句「憂しと思ふ」は、つらいと思う、の意である。
 二句「ものから人の」は、ものの、あの人が、の意で、「ものから」は逆接を表す。
 三句「恋しきは」は、恋しいのは、の意である。
 四句「いづこをしのぶ」は、どこを慕う、の意で、「しのぶ」は思い慕う意である。
 結句「心なるらん」は、心なのだろう、の意で、「らん」は原因を推量する助動詞である。

しのぶ:偲ぶ。思い慕う
作者
よみ人しらず
出典
拾遺和歌集
前の歌
身をつめば露をあはれと思ふかな 暁ごとにいかでおくらん
次の歌
よそにてもありにしものを花すすき ほのかに見てぞ人は恋しき