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思ふなと君は言へども逢ふことを
いつと知りてか我が恋ひざらん

歌の意味
思うなとあなたは言うけれども、逢うことがいつと知って、私が恋しく思わずにいられようか。
鑑賞
巻第十二 恋歌二 756

詞書「題しらず」
 思うなとあなたは言うけれども、次に逢えるのがいつとわかっていれば恋しく思わずにもいられようが、それもわからないのにと詠む歌である。恋を思いとどまるよう求める相手に、逢う日の当てもない身では思わずにいられないと訴えている。次歌の第七百五十七首は、万葉集の歌に和した源順の歌で、この歌の「思ふ」を受けて応じる形となっている。
 作者の「人麿」は柿本人麻呂である。飛鳥時代の宮廷歌人で、万葉集を代表する歌人として歌聖と仰がれ、三十六歌仙に数えられる。拾遺和歌集には、万葉集の歌が人麻呂の作として多く収められている。

 初句「思ふなと」は、思うなと、の意で、「な」は禁止を表す終助詞である。次歌の第七百五十七首の初句「思ふらむ」と、思う心を詠む点で呼応している。
 二句「君は言へども」は、あなたは言うけれども、の意である。
 三句「逢ふことを」は、逢うことを、の意である。
 四句「いつと知りてか」は、いつと知って、の意で、係助詞「か」は反語を表し、結句の連体形「ん」で結ぶ係り結びである。
 結句「我が恋ひざらん」は、私が恋しく思わずにいられようか、の意で、反語により、思わずにはいられないことを示している。

こふ:恋ふ。恋しく思う
作者
柿本人麻呂
出典
拾遺和歌集
前の歌
明日知らぬ我が身なりとも恨みおかむ この世にてのみやまじと思へば
次の歌
思ふらむ心の内を知らぬ身は 死ぬばかりにもあらじとぞ思ふ