蚊遣り火は物思ふ人の心かも
夏の夜すがら下に燃ゆらん
- 歌の意味
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蚊遣り火は、物思いをする人の心なのだろうか。夏の夜通し、表には出さずに下でくすぶり燃えているのだろう。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 769
詞書「蚊遣り火を見侍りて」
蚊遣り火は物思いをする人の心なのだろうか、夏の夜通し、下でくすぶり燃えているのだろうと詠む歌である。詞書から、蚊遣り火を見て詠んだ歌とわかる。炎を上げずに煙を立ててくすぶる蚊遣り火に、表に出せずに胸の内で燃え続ける忍ぶ恋の思いを見立てている。前の二首のあやめ草の端午に続き、夏の景物に恋を託している。
作者の「よしのぶ」は大中臣能宣である。伊勢神宮の祭主を務め、梨壺の五人の一人として後撰和歌集の撰進にあたった。三十六歌仙に数えられる。
初句「蚊遣り火は」は、蚊を追い払うためにいぶす火は、の意である。
二句「物思ふ人の」は、物思いをする人の、の意である。
三句「心かも」は、心なのだろうか、の意で、「かも」は疑問を含んだ詠嘆を表す。ここで句切れとなる三句切れの歌である。
四句「夏の夜すがら」は、夏の夜通し、の意である。
結句「下に燃ゆらん」は、下でくすぶり燃えているのだろう、の意で、「下」には表に出さない心の内の意を重ねている。「らん」は現在推量の助動詞である。
かやりび:蚊遣り火。蚊を追い払うためにいぶす火
よすがら:夜すがら。夜通し
- 作者
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大中臣能宣
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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生ふれども駒もすさめぬあやめ草 かりにも人の来ぬがわびしさ
- 次の歌
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忍ぶれば苦しかりけり篠すすき 秋の盛りになりやしなまし