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今更に訪ふべき人も思ほえず
八重むぐらして門させりてへ

歌の意味
今さら訪ねて来るはずの人も思い当たらない。八重むぐらが生い茂って門を閉ざしているのだと言っておくれ。
鑑賞
巻第十二 恋歌二 775

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 今さら訪ねて来るはずの人も思い当たらない、八重むぐらが生い茂って門を閉ざしていると人に言ってくれと詠む歌である。訪れる人もなく荒れた住まいを、八重むぐらに門を閉ざされたものとし、恋人に見捨てられた身の寂しさと、すねたような諦めの心を表している。秋の荒れた宿の景物に、絶えた恋を重ねている。

 初句「今更に」は、今さら、の意である。
 二句「訪ふべき人も」は、訪ねて来るはずの人も、の意である。
 三句「思ほえず」は、思い当たらない、の意で、ここで句切れとなる三句切れの歌である。
 四句「八重むぐらして」は、幾重にも茂るむぐらによって、の意で、荒れ果てた住まいを表す。
 結句「門させりてへ」は、門を閉ざしていると言え、の意で、「さ」は鎖す、「り」は存続の助動詞、「てへ」は「と言へ」がつまった形である。

やへむぐら:八重葎。幾重にも生い茂るつる草。荒れた住まいを表す
さす:鎖す。門や戸を閉ざす
てへ:「と言へ」がつまった形
作者
よみ人しらず
出典
拾遺和歌集
前の歌
露だにもなからましかば秋の夜に 誰とおきゐて人を待たまし
次の歌
秋は我が心の露にあらねども 物嘆かしき頃にもあるかな