古典和歌stream

あしひきの葛城山にゐる事の
立ちても居ても君をこそ思へ

歌の意味
葛城山にとどまるということのように、立っていても座っていても、あなたのことばかりを思っている。
鑑賞
巻第十三 恋歌三 779

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 葛城山にとどまる様子を引き合いに、立っていても座っていても、あなたのことばかりを思うと詠む歌である。上の句が「立ちても居ても」を導く序詞となり、どんな時も恋人を思い続ける一途な心を表している。
 万葉集巻十一に、葛城山に立つ雲を詠む類歌がある。なお本文の三句は「ゐる事の」とあり、読み仮名の行の「ゐるくもの」と一致しない。ここでは本文の表記に従う。読み仮名の行によれば、葛城山にかかる雲の意となる。

 初句「あしひきの」は、「山」にかかる枕詞である。「あしひきの」で始まる一連の三首目である。
 二句「葛城山に」は、大和と河内の境にある葛城山に、の意で、歌枕である。
 三句「ゐる事の」は、とどまっているということの、の意で、四句の「居ても」と同じ語を重ね、序詞として下の句を導いている。
 四句「立ちても居ても」は、立っていても座っていても、の意で、どのような時も、という気持ちを表す。
 結句「君をこそ思へ」は、あなたのことばかりを思う、の意で、係助詞「こそ」を受けて「思へ」と已然形で結んでいる。第七百八十二首の結句「君をこそ待て」と、「君をこそ」の言い回しを共有している。

かづらきやま:大和と河内の境にある山。歌枕
ゐる:じっととどまる。また座る
作者
よみ人しらず
出典
拾遺和歌集
前の歌
あしひきの山鳥の尾のしだり尾の 長々し夜をひとりかも寝む
次の歌
あしひきの山の山菅やまずのみ 見ねば恋しき君にもあるかな