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秋の夜の月かも君は雲隠れ
しばしも見ねばここら恋しき

歌の意味
秋の夜の月なのだろうか、あなたは。雲に隠れて少しの間でも見ないと、これほど恋しいことよ。
鑑賞
巻第十三 恋歌三 785

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 あなたは秋の夜の月なのだろうか、雲に隠れて少しの間でも見ないと、これほどまでに恋しいと詠む歌である。恋人を秋の夜の美しい月にたとえ、わずかな間も姿を見ないと募る恋しさを詠んでいる。
 作者の「人まろ」は柿本人麻呂である。飛鳥時代の宮廷歌人で、万葉集を代表する歌人として歌聖と仰がれ、三十六歌仙に数えられる。拾遺和歌集には、万葉集の歌が人麻呂の作として多く収められている。
 万葉集巻十に類歌が収められている。

 初句「秋の夜の」は、秋の夜の、の意である。次歌の第七百八十六首の初句と同じ句である。
 二句「月かも君は」は、あなたは月なのだろうか、の意で、「かも」は疑問を表す。倒置によって恋人を月にたとえている。
 三句「雲隠れ」は、雲に隠れて、の意である。前の第七百八十三首と第七百八十四首の三句と同じ句で、雲に隠れる月を詠む三首目である。
 四句「しばしも見ねば」は、少しの間でも見ないと、の意である。
 結句「ここら恋しき」は、これほど恋しい、の意で、「ここら」は、たいそう、多く、の意を表す。

ここら:数多く。たいそう
作者
柿本人麻呂
出典
拾遺和歌集
前の歌
逢ふ事はかたわれ月の雲隠れ おぼろけにやは人の恋しき
次の歌
秋の夜の月見るとのみ起き居つつ 今宵も寝でや我は帰らん