秋の夜の月見るとのみ起き居つつ
今宵も寝でや我は帰らん
- 歌の意味
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秋の夜の月を見るというだけで起きていて、今夜も共に寝ることなく、私は帰るのだろうか。
- 鑑賞
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巻第十三 恋歌三 786
詞書「円融院御屏風、八月十五夜月の影池に映れる家に、男女ゐて懸想したる所」
秋の夜の月を見るというばかりで起きて過ごし、今夜も共寝をすることなく帰るのだろうかと詠む歌である。詞書から、円融院の屏風に描かれた、中秋の名月が池に映る家で男女が語らう場面に添えて詠まれたことがわかる。月見を口実に夜を明かしながら思いを遂げられない男の心を、絵の中の人物になりかわって詠んでいる。
作者の「平兼盛」は、光孝天皇の流れをくむ平氏の歌人で、駿河守などを務めた。三十六歌仙に数えられ、天徳内裏歌合の「忍ぶれど色に出でにけり」の歌で知られる。
初句「秋の夜の」は、秋の夜の、の意である。前歌の第七百八十五首の初句と同じ句である。
二句「月見るとのみ」は、月を見るというだけで、の意で、「のみ」が月見を口実とする心を表す。
三句「起き居つつ」は、起きていながら、の意で、「つつ」は動作の継続を表す。
四句「今宵も寝でや」は、今夜も寝ないで、の意で、「で」は打消の接続助詞、「や」は疑問の係助詞である。共寝をしないままに、という意をこめている。第七百七十七首の四句「今宵も又や」と、今夜もという嘆きを共有している。
結句「我は帰らん」は、私は帰るのだろうか、の意で、係助詞「や」を受けて推量の助動詞「ん」の連体形で結んでいる。
けさうす:懸想す。異性に思いをかける
おきゐる:起き居る。寝ずに起きている
- 作者
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平兼盛
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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秋の夜の月かも君は雲隠れ しばしも見ねばここら恋しき
- 次の歌
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恋しさは同じ心にあらずとも 今宵の月を君見ざらめや