ことならば闇にぞあらまし秋の夜の
なぞ月影の人頼めなる
- 歌の意味
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どうせなら闇夜であってほしかった。秋の夜の月の光は、どうして人に期待を抱かせるのだろうか。
- 鑑賞
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巻第十三 恋歌三 796
詞書「月明かき夜、人を待ち侍りて」
どうせ来ないのなら闇夜であればよかった、なぜ秋の夜の月の光は人に期待を抱かせるのかと詠む歌である。詞書から、月の明るい夜に人を待って詠んだ歌とわかる。明るい月夜は恋人の訪れを期待させるが、来ないまま夜が更けていくつらさを、月への恨みとして詠んでいる。
作者の「人まろ」は柿本人麻呂である。飛鳥時代の宮廷歌人で、万葉集を代表する歌人として歌聖と仰がれ、三十六歌仙に数えられる。拾遺和歌集には、万葉集の歌が人麻呂の作として多く収められている。
初句「ことならば」は、同じことならば、どうせなら、の意である。
二句「闇にぞあらまし」は、闇夜であればよかったのに、の意で、係助詞「ぞ」を受け、反実仮想の助動詞「まし」の連体形で結んでいる。ここで句切れとなる。
三句「秋の夜の」は、秋の夜の、の意である。第七百八十五首と第七百八十六首の初句と同じ句である。
四句「なぞ月影の」は、どうして月の光が、の意で、「なぞ」は疑問を表す。月を詠む一連の結びの歌である。
結句「人頼めなる」は、人に期待を抱かせるのか、の意で、「なぞ」を受けて連体形で結んでいる。巻末の第八百四十八首の初句「頼めつつ」と、期待させながら来ない恋人を待つ心を共有している。
ひとだのめ:人頼め。人に期待を持たせること
- 作者
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柿本人麻呂
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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長月の有明の月のありつつも 君し来まさば我恋ひめやも
- 次の歌
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降らぬ夜の心を知らで大空の 雨をつらしと思ひけるかな