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衣だに中にありしはうとかりき
逢はぬ夜をさへ隔てつるかな

歌の意味
衣でさえ二人の間にあったのはうとましかった。それなのに今は、逢わない夜までも隔ててしまったことよ。
鑑賞
巻第十三 恋歌三 798

詞書「題しらず」
 共寝の時には二人の間にある衣一枚さえうとましかったのに、今は逢わない夜までも二人を隔てていると嘆く歌である。わずかな衣の隔てさえ厭うた親密な時と、逢えない夜が重なる今とを対比し、遠のいた恋人との距離を詠んでいる。

 初句「衣だに」は、衣でさえ、の意で、「だに」は軽いものを挙げて重いものを類推させる副助詞である。
 二句「中にありしは」は、二人の間にあったのは、の意で、共寝の時を思い起こしている。
 三句「うとかりき」は、うとましかった、の意で、ここで句切れとなる。
 四句「逢はぬ夜をさへ」は、逢わない夜までも、の意で、「さへ」は添加を表す。
 結句「隔てつるかな」は、隔ててしまったことよ、の意で、「かな」は詠嘆を表す。衣という小さな隔てと逢わない夜という大きな隔てを、同じ「隔て」の主題で別の尺度に置いて対比している。

へだつ:隔つ。間を置いて遠ざける
作者
よみ人しらず
出典
拾遺和歌集
前の歌
降らぬ夜の心を知らで大空の 雨をつらしと思ひけるかな
次の歌
長き夜も人をつらしと思ふには 寝なくに明くる物にぞありける