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人言は夏野の草の繁くとも
君と我とし携はりなば

歌の意味
人の噂は夏の野の草のように多くても、あなたと私とが手を取り合っているならば、かまわない。
鑑賞
巻第十三 恋歌三 827

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 人の噂が夏野の草のように多くても、あなたと私が手を取り合っていればかまわないと詠む歌である。生い茂る夏草のようにうるさい世間の噂を気にかけず、二人の結びつきさえあればよいという強い思いを詠んでいる。
 作者の「人まろ」は柿本人麻呂である。飛鳥時代の宮廷歌人で、万葉集を代表する歌人として歌聖と仰がれ、三十六歌仙に数えられる。拾遺和歌集には、万葉集の歌が人麻呂の作として多く収められている。

 初句「人言は」は、人の噂は、の意である。
 二句「夏野の草の」は、夏の野に茂る草のように、の意で、噂の多さのたとえである。次歌の第八百二十八首の「野も山も茂りあひぬる夏」と、夏の野の茂みを共有している。
 三句「繁くとも」は、多くても、の意で、「とも」は逆接の仮定を表す。
 四句「君と我とし」は、あなたと私とが、の意で、「し」は強意の副助詞である。
 結句「携はりなば」は、手を取り合っているならば、の意で、後に、かまわない、という意が省略されている。

ひとごと:人言。世間の噂
たづさはる:携はる。手を取り合う。寄り添う
作者
柿本人麻呂
出典
拾遺和歌集
前の歌
鳴る神のしばし動きて空曇り 雨も降らなん君とまるべく
次の歌
野も山も茂りあひぬる夏なれど 人のつらさは言の葉もなし