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思ひ知る人に見せばや夜もすがら
我がとこなつにおきゐたる露

歌の意味
物の情けを知る人に見せたいものだ。一晩中、我が家の常夏の花に置いている露を、そして寝床で起きたまま流す私の涙を。
鑑賞
巻第十三 恋歌三 831

詞書「廉義公家の障子の絵に、撫子生ひたる家の心細げなるを」
 物の情けを知る人に見せたい、一晩中常夏の花に置いている露を、すなわち寝床で起きたまま流す涙をと詠む歌である。詞書から、廉義公の家の障子に描かれた、撫子が生えている心細げな家の絵に添えて詠んだことがわかる。絵の中の家に住む女になりかわり、独り寝の寂しさを露に託している。
 作者の「清原元輔」は、清少納言の父で、梨壺の五人の一人として後撰和歌集の撰進にあたった。三十六歌仙に数えられる。

 初句「思ひ知る」は、物の情けを知る、の意である。
 二句「人に見せばや」は、人に見せたいものだ、の意で、「ばや」は自己の願望を表す。ここで句切れとなる。
 三句「夜もすがら」は、一晩中、の意である。
 四句「我がとこなつに」は、「とこなつ」が撫子の別名の「常夏」と、寝る「床」を掛ける掛詞である。前歌の第八百三十首の「なでしこ」と、同じ花を共有している。
 結句「おきゐたる露」は、「おき」が露が「置き」と、寝ずに「起き」を掛ける掛詞で、露に涙を重ねている。体言止めで結んでいる。次歌の第八百三十二首の「露けく」と、露を共有している。

とこなつ:撫子の別名の「常夏」と、寝る「床」を掛ける
おきゐる:露が「置き」ている意と、寝ずに「起き居る」意を掛ける
作者
清原元輔
出典
拾遺和歌集
前の歌
山がつの垣ほに生ふるなでしこに 思ひよそへぬ時の間ぞなき
次の歌
秋の野の草葉も分けぬ我が袖の 露けくのみもなりまさるかな