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恋しくは形見にせむと我が宿に
植ゑし秋萩今盛りなり

歌の意味
恋しくなったら形見にしようと思って我が家の庭に植えた秋萩が、今まさに花盛りである。
鑑賞
巻第十三 恋歌三 837

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 恋しくなったら形見にしようと庭に植えた秋萩が、今まさに盛りを迎えていると詠む歌である。形見として植えた萩が盛りになったことで、それだけ恋しい人に逢えない時が過ぎたことを、しみじみと感じさせる。
 作者の「赤人」は、奈良時代の宮廷歌人で、姓を山部という。柿本人麻呂と並び称され、三十六歌仙に数えられる。

 初句「恋しくは」は、恋しくなったら、の意で、「は」は仮定を表す。
 二句「形見にせむと」は、思い出のよすがにしようと、の意である。第八百八首の二句の「かたみ」と、形見の語を共有している。
 三句「我が宿に」は、我が家の庭に、の意である。
 四句「植ゑし秋萩」は、植えた秋萩が、の意である。ここから第八百三十九首まで秋萩を詠む歌が続き、次歌の第八百三十八首の初句も「秋萩の」である。
 結句「今盛りなり」は、今まさに花盛りである、の意である。萩の盛りに、逢えずに過ぎた月日の長さを重ねている。

かたみ:形見。思い出のよすがとなるもの
あきはぎ:秋萩。秋に咲く萩
作者
山部赤人
出典
拾遺和歌集
前の歌
住吉の岸を田に掘り蒔きし稲の 刈るほどまでも逢はぬ君かな
次の歌
秋萩の下葉を見ずは忘らるる 人の心をいかで知らまし