色もなき心を人に染めしより
移ろはむとは我が思はなくに
- 歌の意味
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色もない私の心をあなたに染めてからというもの、色があせるように心変わりしようなどとは、私は思いもしないのに。
- 鑑賞
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巻第十三 恋歌三 842
詞書は前の歌に続き「女の許につかはしける」
色もない私の心をあなたに染めて以来、心変わりしようなどとは思いもしないと詠む歌である。詞書から、女のもとに贈った歌とわかる。恋を染物にたとえ、一度あなたの色に染まった心は決してあせないと、変わらぬ思いを誓っている。
作者の「つらゆき」は紀貫之である。古今和歌集の撰者の中心人物で、仮名序を執筆し、土佐日記を著した。三十六歌仙に数えられる。
初句「色もなき」は、色もない、の意で、まだ誰にも染まっていない心を言う。
二句「心を人に」は、私の心をあなたに、の意である。
三句「染めしより」は、染めてからというもの、の意で、「し」は過去の助動詞「き」の連体形である。
四句「移ろはむとは」は、色があせるように心変わりしようとは、の意で、「移ろふ」は「染め」の縁語である。前の第八百四十首の初句「移ろふは」と、移ろうの語を共有している。第八百四十首と第八百四十一首が相手の心変わりを嘆くのに対し、この歌は自分は変わらないと誓い、心変わりをめぐって対をなしている。
結句「我が思はなくに」は、私は思いもしないのに、の意で、「なくに」は打消に詠嘆を添えて言いさす形である。
そむ:染む。色に染める。心を寄せる
うつろふ:移ろふ。色があせる。心が変わる
- 作者
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紀貫之
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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言の葉も霜にはあへずかれにけり こやあきはつるしるしなるらん
- 次の歌
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数ならぬ身をうち河の網代木に 多くのひをも過ぐしつるかな