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朝寝髪我は梳らじうつくしき
人の手枕触れてしものを

歌の意味
朝の寝乱れた髪を、私は櫛でとかすまい。いとしい人の手枕に触れた髪なのだから。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 849

詞書「題しらず」
 朝の寝乱れた髪を櫛でとかすまい、いとしい人の手枕に触れた髪なのだから、と詠む歌である。恋人と過ごした一夜の名残を髪にとどめておきたいという、女のひたむきな思いを、寝乱れ髪という身近な姿に託して詠んでいる。
 恋歌四の巻頭の歌である。巻末の第九百二十四首も人麻呂の作とされる歌で、巻の始めと終わりを人麻呂の歌が飾っている。巻頭が恋人と共寝した朝の余韻を詠むのに対し、巻末は神の斎垣も越えてしまいそうだと身を顧みない激しい恋心で結び、恋の思いの深さで呼応している。
 作者の「人麿」は柿本人麻呂である。飛鳥時代の宮廷歌人で、万葉集を代表する歌人として歌聖と仰がれ、三十六歌仙に数えられる。拾遺和歌集には、万葉集の歌が人麻呂の作として多く収められている。
 万葉集巻十一に、三句と四句を「うるはしき君が手枕」とする類歌が収められている。

 初句「朝寝髪」は、朝起きたままの寝乱れた髪、の意である。名詞で歌い起こし、共寝の翌朝の姿を鮮やかに示している。
 二句「我は梳らじ」は、私は櫛でとかすまい、の意で、「じ」は打消の意志を表す。ここで句切れとなる。
 三句「うつくしき」は、いとしい、の意で、愛情をこめて恋人を形容している。
 四句「人の手枕」は、恋人の腕枕、の意である。巻末の第九百二十四首が神の斎垣を越える激しさを詠むのに対し、ここでは手枕というささやかな触れ合いに恋の喜びを込めている。
 結句「触れてしものを」は、触れたものなのだから、の意で、「し」は過去の助動詞「き」の連体形、「ものを」は理由を表す。二句の決意の理由を倒置して述べている。

あさねがみ:朝寝髪。朝起きたままの寝乱れた髪
けづる:梳る。櫛で髪をとかす
たまくら:手枕。腕を枕にすること。共寝のしるし
作者
柿本人麻呂
出典
拾遺和歌集
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頼めつつ来ぬ夜あまたになりぬれば 待たじと思ふぞ待つにまされる
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