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湊入りの葦分け小舟障り多み
我が思ふ人に逢はぬころかな

歌の意味
河口に入る葦を分けて進む小舟が、障りが多くて進めないように、差し障りが多いので、私が思う人に逢えないこのごろであることよ。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 853

詞書「題しらず」
 河口に入ろうと葦をかき分ける小舟が行く手を阻まれるように、差し障りが多くて恋しい人に逢えないこのごろだと嘆く歌である。葦の茂みに難渋する小舟の姿に、思うにまかせない恋の状況を重ねている。
 作者の「人まろ」は柿本人麻呂である。飛鳥時代の宮廷歌人で、万葉集を代表する歌人として歌聖と仰がれ、三十六歌仙に数えられる。拾遺和歌集には、万葉集の歌が人麻呂の作として多く収められている。
 万葉集巻十一に、結句を「逢はぬころかも」とする類歌が収められている。

 初句「湊入りの」は、河口や港に入ろうとする、の意である。一音多い字余りの句である。
 二句「葦分け小舟」は、葦をかき分けて進む小舟、の意である。初句から二句までが、三句の「障り多み」を導く序詞となっている。本巻の第八百八十七首の「葦火」、第八百九十三首の「葦根」とともに、難波を思わせる葦の景物を用いている。
 三句「障り多み」は、障害が多いので、の意で、「み」は原因や理由を表す接尾語である。小舟の行く手を阻むものと、恋の妨げとを重ねている。
 四句「我が思ふ人に」は、私が思いを寄せる人に、の意である。
 結句「逢はぬころかな」は、逢えないこのごろであることよ、の意で、「かな」は詠嘆を表す。

みなと:湊。河口や港
さはり:障り。妨げ。差し障り
作者
柿本人麻呂
出典
拾遺和歌集
前の歌
いかにして今日を暮らさむ小余綾の いそぎ出でてもかひなかりけり
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岩代の野中に立てる結び松 心も解けず昔思へば