杉立てる宿をぞ人は尋ねける
心のまつはかひなかりけり
- 歌の意味
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あの人は、杉の立っている家を訪ねて行ったのだった。私が心の中で待っていたのは、何のかいもなかったことだ。
- 鑑賞
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巻第十四 恋歌四 866
詞書「題しらず」
恋しい人は杉の立つ別の女の家を訪ねて行き、私が心の中で待っていたのは何のかいもなかったと嘆く歌である。目印の「杉」に対して心の「松」を置き、待つ身のむなしさを木の名の対比で詠んでいる。
古今和歌集の雑歌下の「我が庵は三輪の山もと恋しくはとぶらひ来ませ杉立てる門」を踏まえ、杉の立つ家を、恋人を呼び寄せる別の女の家に見立てている。
初句「杉立てる」は、杉が立っている、の意で、「る」は存続の助動詞「り」の連体形である。古今和歌集の三輪の歌の「杉立てる門」を踏まえている。
二句「宿をぞ人は」は、家をあの人は、の意で、係助詞「ぞ」が強調している。
三句「尋ねける」は、訪ねて行ったのだった、の意で、係助詞「ぞ」を受けて過去の助動詞「けり」の連体形「ける」で結んでいる。ここで句切れとなる。
四句「心のまつは」は、心の中で待っていたことは、の意で、「まつ」は「松」と「待つ」を掛けた掛詞である。初句の「杉」と、木の名で対をなしている。
結句「かひなかりけり」は、かいがなかったことだ、の意で、「けり」は詠嘆を表す。本巻の第八百五十二首の結句と同じ句で、待っても報われない嘆きを共有している。
まつ:木の「松」と、人を「待つ」を掛ける
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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なかなかに言ひも放たで信濃なる 木曽路の橋のかけたるやなぞ
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石上布留の社の木綿襷 かけてのみやは恋ひむと思ひし