何せむに命をかけて誓ひけん
いかばやと思ふ折もありけり
- 歌の意味
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どうして命をかけてまで誓ったのだろうか。行きたい、生きていたいと思う折もあったのに。
- 鑑賞
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巻第十四 恋歌四 871
詞書「女を恨みて、さらにまうで来じと誓ひて後に遣はしける」
どうして命をかけてまで、もう行かないなどと誓ってしまったのか、あなたのもとへ行きたいと思う折もあったのにと、自らの誓いを悔やむ歌である。「いかばや」に「行かばや」と「生かばや」を掛け、行けば誓いを破って命を失うという板挟みを、機知をもって詠んでいる。
詞書によれば、女を恨んで、もう決して通わないと誓ったのちに、その女に贈った歌である。恨んで誓ったものの、思い直して逢いたくなった心を率直に伝えている。
作者の「実方朝臣」は、藤原定時の子で、叔父の藤原済時の養子となった。左近衛中将を務めたのち陸奥守として下り、任地で没した。中古三十六歌仙の一人で、百人一首の「かくとだに」の歌で知られる。
初句「何せむに」は、どうして、何のために、の意である。
二句「命をかけて」は、命をかけて、の意である。前歌の第八百七十首の「人の命の」と、命と誓いを結びつける点を共有している。
三句「誓ひけん」は、誓ったのだろうか、の意で、「けん」は過去の原因を推量する助動詞である。前歌の「誓ひてし」に続いて、誓いを詠む一連を結んでいる。ここで句切れとなる。
四句「いかばやと思ふ」は、行きたいと思う、生きていたいと思う、の意で、「いかばや」は「行かばや」と「生かばや」を掛けた掛詞である。「ばや」は願望を表す。
結句「折もありけり」は、時もあったことだ、の意で、「けり」は気づきの詠嘆を表す。
いかばや:行きたい意の「行かばや」と、生きたい意の「生かばや」を掛ける
まうでく:詣で来。参上する。訪れる
- 作者
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藤原実方
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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忘らるる身をば思はず誓ひてし 人の命の惜しくもあるかな
- 次の歌
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ちりひぢの数にもあらぬ我ゆゑに 思ひわぶらん妹がかなしさ