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恋ひ恋ひて後も逢はむと慰むる
心しなくは命あらめや

歌の意味
恋い焦がれ続けて、後には逢おうと自分を慰める心がもしなかったなら、命が続いていようか、続いてはいないだろう。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 873

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 恋い続けながらも、いつかは逢えると自分を慰める心がなかったら、とても生きてはいられないと詠む歌である。逢えない苦しさの中で、後の逢瀬への望みだけが命をつないでいるという切実な思いを詠んでいる。
 作者の「人まろ」は柿本人麻呂である。飛鳥時代の宮廷歌人で、万葉集を代表する歌人として歌聖と仰がれ、三十六歌仙に数えられる。拾遺和歌集には、万葉集の歌が人麻呂の作として多く収められている。
 万葉集巻十二に、結句を「生きてあらめやも」とする類歌が収められている。

 初句「恋ひ恋ひて」は、恋い続けて、の意で、同じ語を重ねて恋の長さと深さを表している。
 二句「後も逢はむと」は、後にはきっと逢おうと、の意で、「む」は意志の助動詞である。本巻の第八百五十八首の四句と結句「ありて後にも逢はむとぞ思ふ」と、後の逢瀬を頼む言葉を共有している。
 三句「慰むる」は、自分の心を慰める、の意である。
 四句「心しなくは」は、その心がもしなかったなら、の意で、「し」は強意の副助詞、「なくは」は仮定を表す。
 結句「命あらめや」は、命があろうか、ありはしない、の意で、「め」は推量の助動詞「む」の已然形、「や」は反語を表す。

なぐさむ:慰む。心を晴らす。気をまぎらす
作者
柿本人麻呂
出典
拾遺和歌集
前の歌
ちりひぢの数にもあらぬ我ゆゑに 思ひわぶらん妹がかなしさ
次の歌
かくばかり恋しきものと知らませば よそに見るべくありけるものを