古典和歌stream

旅人の茅刈り覆ひ作るてふ
まろやは人を思ひ忘るる

歌の意味
旅人が茅を刈って覆い、作るという丸屋ではないが、この私があの人を思い忘れたりしようか、忘れはしない。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 886

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 旅人が茅を刈って屋根を覆って作るという丸屋の「まろや」に、自分を指す「麿や」を掛け、この私が恋しい人を忘れたりするだろうかと詠む歌である。粗末な仮小屋の景から、変わらぬ恋心の宣言へと転じている。

 初句「旅人の」は、旅をする人が、の意である。
 二句「茅刈り覆ひ」は、茅を刈って屋根を覆い、の意である。
 三句「作るてふ」は、作るという、の意で、「てふ」は「といふ」がつまった形である。初句からここまでが「まろや」を導く序詞となっている。
 四句「まろやは人を」は、この私があの人を、の意で、「まろや」は粗末な仮小屋の「丸屋」と、自分を指す「麿」に係助詞「や」の付いた「麿や」を掛けた掛詞である。「やは」は反語を表す。前歌の第八百八十五首の「こや」と、小屋と丸屋を詠む二首が並んでいる。
 結句「思ひ忘るる」は、思い忘れるだろうか、忘れはしない、の意で、係助詞「やは」を受けて連体形で結んでいる。

まろや:粗末な仮小屋の「丸屋」と、自分を指す「麿」に係助詞「や」の付いた「麿や」を掛ける
かや:茅。屋根をふくのに用いるススキやチガヤなどの草
作者
よみ人しらず
出典
拾遺和歌集
前の歌
津の国の難波わたりに作るなる こやといはなん行きて見るべく
次の歌
難波人葦火焚く屋は煤たれど おのが妻こそ常めづらなれ