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ねぬなはのくるしかるらん人よりも
我ぞますだのいけるかひなき

歌の意味
蓴菜を手繰るように苦しんでいるであろうあの人よりも、私のほうがまさって、益田の池ではないが、生きているかいもないことだ。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 894

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 蓴菜を手繰るように苦しんでいるだろうあの人よりも、私のほうがはるかにまさって、生きているかいもないほど苦しいと詠む歌である。水草の蓴菜、大和の益田の池と、水辺の景物に言葉を掛け重ね、恋の苦しさを競うように詠んでいる。

 初句「ねぬなはの」は、水草の蓴菜の、の意である。蓴菜は茎を手繰って採ることから、「繰る」と同音の「くるし」を導いている。
 二句「くるしかるらん」は、苦しいであろう、の意で、「くる」は蓴菜を「繰る」と「苦し」を掛けている。「らん」は現在推量の助動詞である。
 三句「人よりも」は、あの人よりも、の意である。
 四句「我ぞますだの」は、私のほうがまさって、の意で、「ますだ」は、まさる意の「増す」と、大和国の「益田」の池を掛けた掛詞である。
 結句「いけるかひなき」は、生きているかいもない、の意で、「いける」は益田の「池」と「生ける」を掛けた掛詞である。係助詞「ぞ」を受けて連体形「なき」で結んでいる。

ねぬなは:蓴菜。水草の一種で、茎を手繰って採る
くる:蓴菜を手繰る意の「繰る」と、「苦し」を掛ける
ますだ:まさる意の「増す」と、大和国の地名の「益田」を掛ける
いける:益田の「池」と、生きている意の「生ける」を掛ける
作者
よみ人しらず
出典
拾遺和歌集
前の歌
葦根はふうきは上こそつれなけれ 下はえならず思ふ心を
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たらちねの親の飼ふ蚕の繭ごもり いぶせくもあるか妹に逢はずして