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いさやまだ恋てふことも知らなくに
こやそなるらんいこそ寝られね

歌の意味
さあ、どうだろう。まだ恋というものも知らないのに、これがそうなのだろうか。眠ることもできない。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 896

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 まだ恋というものを知らないのに、眠れないこの思いがそれなのだろうかと、初めての恋に戸惑う心を詠む歌である。恋を知らない者が、眠れないという自らの変化に気づき、これが恋かと問う初々しさが印象的である。

 初句「いさやまだ」は、さあどうだろう、まだ、の意で、「いさや」は返答をためらう気持ちを表す。
 二句「恋てふことも」は、恋というものも、の意で、「てふ」は「といふ」がつまった形である。
 三句「知らなくに」は、知らないのに、の意で、「なく」は打消の助動詞「ず」の名詞化した形、「に」は逆接を表す。
 四句「こやそなるらん」は、これがそれなのだろうか、の意で、「こ」は、これ、「や」は疑問の係助詞、「そ」は、それ、を指す。「らん」は現在推量の助動詞の連体形で結んでいる。ここで句切れとなる。
 結句「いこそ寝られね」は、眠ることができない、の意で、「い」は眠りの意の名詞である。係助詞「こそ」を受けて打消の助動詞「ず」の已然形「ね」で結んでいる。次歌の第八百九十七首の「うたた寝」と、眠りを詠む歌が続いている。

い:寝。眠り。「いを寝」の形で用いる
作者
よみ人しらず
出典
拾遺和歌集
前の歌
たらちねの親の飼ふ蚕の繭ごもり いぶせくもあるか妹に逢はずして
次の歌
たらちねの親のいさめしうたた寝は 物思ふ時のわざにぞありける